五五雑記

五十代無職の日常です

ポッドキャスト:沢木耕太郎『凍』

書籍版ではなく、ポッドキャストのラジオドラマ版です。

登山家・山野井泰史がその妻・妙子とともにヒマラヤの難峰ギャチュンカンに挑んだ様子を描いたノンフィクション作品。

主人公は国内外の評価が高い世界屈指のクライマーなんですが、それは後から知ったことです。

予備知識無しで聴取したことで、終始ハラハラドキドキできたのは幸運でした。

沢木耕太郎が山野井夫妻に取材して編んだ作品でしょうから、最悪の結末はないだろうと予想はできたんです。

それでも、「ひょっとして最悪の結末が待っているんではないか?」と思わせるほど、次から次へと過酷な試練が二人を襲います。

ナレーションも「拷問のような時間だったが、その過酷さはまだ始まりに過ぎなかった」などと煽りまくり。

地獄が待っているとわかっているのに上へ上へと歩みを止めない二人に、もうやめてくれとこちらが言いたくなりました。

 

原作をおよそ120分に再構成したシナリオ、臨場感溢れるセリフやナレーション、効果音が没入感を高めてくれたラジオドラマ版は、もちろん原作の完成度があってのことです。

ぜひ書籍版を読みたいと思いましたが、残念ながらKindle版は出ていないので、帰国後の楽しみとしておきます。

 

余談ですが、このギャチュンカン登頂の後、夫妻は中国のポタラ北壁にも挑戦して世界初登頂を達成しています。

それに触発された中国人登山家3名がポタラ北壁に挑む様子を撮影した映像作品が『加油!布达拉(Be Tough! Potala)』です。

インタビューを受ける山野井夫妻。

凍傷でほとんどの指を失っている二人ですが、本当に幸せそうな笑顔が印象的でした。